国際養子縁組と日本:なぜ日本では海外との養子縁組ができないのか
「海外の子どもを養子にしたい」「日本の子どもを外国の夫婦が養子にすることはできるのか」——国際養子縁組について知りたい人は多いが、日本の実態は多くの人が想像するよりもはるかに制限的だ。
結論を先に述べると、現在の日本で国際養子縁組は事実上できない状態にある。その理由を法律と制度の観点から整理する。
国際養子縁組とは何か
国際養子縁組とは、子どもと養親が異なる国籍・国の居住者である養子縁組のことだ。主なパターンは2つある。
- 日本の子どもが外国の夫婦の養子になる(日本から海外へ)
- 外国の子どもが日本の夫婦の養子になる(海外から日本へ)
欧米では特に1990〜2000年代に国際養子縁組が盛んだったが、児童売買・虐待などの問題が顕在化し、現在は世界的に件数が減少している。
ハーグ条約と日本の未加盟問題
国際養子縁組の規制に関する国際条約は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約」(1993年締結)だ。この条約は、国際養子縁組の手続きの透明化・子どもの権利保護・児童売買の防止を目的としている。
日本は2014年にハーグ条約(国際的な親権問題に関するもの)を批准したが、国際養子縁組に関するハーグ条約(1993年条約)は未批准のままだ。
G7(主要7カ国)の中で国際養子縁組の法的枠組みが整っていないのは日本のみとも指摘されている。国内での「民間機関による国際養子縁組のあっせん」は事実上、厚生労働省(現こども家庭庁)が認めていない状況が続いている。
なぜ国際養子縁組が難しいのか
法的枠組みの不備
日本には国際養子縁組を規律する国内法が存在しない。養子縁組自体は民法に基づいているが、「国際」要素(外国籍・外国居住の当事者、外国での法的効力の承認)に対応する規定がない。
児童売買リスクへの懸念
1990年代以前、日本から海外への養子縁組が行われた時期があったが、その一部で金銭を介した事実上の「児童売買」的な事例が問題視された。この歴史的背景から、行政は国際養子縁組に対して慎重な姿勢をとっている。
国内の受け皿不足
日本では、社会的養護が必要な子どもを施設で育てる傾向が根強く、「国内での家庭養護(里親・養子縁組)を優先すべき」という政策判断がある。国内での縁組件数自体が年間700件前後で推移しており、海外への「送出し」を促進する動機が薄い。
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外国人が日本の子どもを養子にできるか
外国籍の夫婦(または外国に居住する夫婦)が日本の子どもを特別養子縁組で迎えることは、現実問題として極めて困難だ。
民間あっせん機関は国際養子縁組のあっせんを認められておらず(あっせん法の規制および行政方針による)、児童相談所も外国人家庭への委託には慎重だ。
理論上、外国人でも日本に住所を置き、日本の家庭裁判所に申立てを行うことで養子縁組の可能性はあるが、実務的な障壁は大きい。
日本人が外国の子どもを養子にできるか
日本人夫婦が海外(例:インド、韓国、台湾、フィリピン、コロンビアなど)の子どもを養子にするケースも、現在はほぼ存在しない。
かつて一部のキリスト教系団体が韓国の子どもの縁組を仲介していたが、こうした活動は現在行われていない。送出し国側の法整備(韓国は2012年に国際養子縁組を事実上禁止)と、日本側の受け入れ制度の不在が重なって、チャンネルが閉じた状態にある。
在日外国人夫婦が日本で養子縁組する場合
日本に合法的に居住する外国籍夫婦(永住者・長期在留者)が日本の養子縁組制度を利用することは、法律上排除されていない。しかし実務上は、日本語でのやり取り・日本の家庭裁判所での手続き・民間機関の審査を経る必要があり、ハードルは高い。
特別養子縁組の審判においては、子どもの「国籍」と「将来の生活環境の安定性」が審査される。外国籍養親が帰国した場合の子どもの法的地位(養子縁組の国際的承認)も問題になりうる。
今後の見通し
国連の子どもの権利委員会や研究者からは、日本への国際養子縁組ハーグ条約批准を求める声が継続的に上がっている。こども家庭庁も長期的な政策課題として検討しているが、具体的な立法スケジュールは示されていない。
当面の間、日本における養子縁組の選択肢は国内制度(特別養子縁組・普通養子縁組)に限定される。
国内の特別養子縁組制度の詳細、手続きの流れ、民間機関の選び方については、日本の養子縁組ガイド(完全版)で体系的に解説している。
よくある質問
Q. 海外で生まれた子どもを日本に連れてきて養子縁組することはできますか?
現在の法的・行政的枠組みでは事実上できない。海外で入養(現地法による養子縁組)を成立させた場合、日本の戸籍でその効力を認めるかどうかは個別の法的判断が必要だ。専門の弁護士(国際家族法)への相談が必須だ。
Q. 日本国籍を持つ子どもが海外の夫婦に養子縁組された場合、日本国籍はどうなりますか?
日本国籍は国籍法に基づき決定される。外国での養子縁組で外国国籍を取得しても、日本国籍は自動的には失われない(外国国籍取得後に国籍選択の問題が生じる場合がある)。個別ケースによって異なるため、法務省・在外公館への確認が必要だ。
Q. 日本でのハーグ条約の批准はいつになりますか?
現時点で具体的なスケジュールは公表されていない。国内での社会的養護の推進(里親・養子縁組の件数増加)が優先政策とされており、国際養子縁組の枠組み整備は中長期的な課題として位置付けられている。
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